2007/01/12

次世代DVD戦争、早期に決着? ソフト数「4月逆転でBD」

米ラスベガスで11日(日本時間12日)まで開催中の世界最大の家電見本市「国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」。次世代DVD規格で主導権争いを続ける「ブルーレイ・ディスク(BD)」と「HD DVD」の2陣営が激しく火花を散らしている。2006年から本格的に商品が発売されたばかりで、普及はこれからが本番だが、CESの会場では、「規格争いは短期間で雌雄が決する」との声も聞かれた。大胆予測の根拠は?

 ≪日本シェア96%≫

 「日本では、12月までに、次世代DVD対応機で、ブルーレイのシェアが96%を占めた」

 ブルーレイ・ディスク協会のアンディ・パーソンズ米促進委員会議長は、CES開幕前日の7日の現地での記者会見で、資料を片手にBD優勢を強調してみせた。

 原動力は、BD規格を主導するソニーグループのソニー・コンピュータエンタテイメント(SEC)が11月に発売した家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)3」。米国では06年内に100万台を出荷。日本でも、業界推計で46万台程度が売れたとみられている。

 ゲーム機という武器を持つBDに対し、普及台数で不利な戦いを強いられているHD DVD陣営も負けてはいない。

 「昨年の販売台数は世界で約10万台だったが、今年は200万台の普及を目指したい」

 陣営を引っ張る東芝の藤井美英執行役上席常務は、7日の会見で、新商品をお披露目し、こうぶち上げた。

 「PS3は、あくまでゲーム機。主なユーザーである子供が映画ソフトを次々に買うとは思えない」(同社首脳)と、BD陣営を牽制(けんせい)する。実際、ソフトの数では、ワーナー・ブラザーズ、パラマウント、ユニバーサルなどが07年に新たに300タイトル以上を発売する予定で、BDを上回っている。

 BD陣営が、「PS3所有者の80%が映画ソフトを購入すると回答した」(パーソンズ議長)とむきになって反論するように、映画ソフトの数が、規格争いの行方を大きく左右することは間違いなさそうだ。

 「これから3カ月後には、規格争いの趨勢(すうせい)はみえてくる。BDが、優位に立っているはずだ」。現地入りしている日本のある有力業界関係者は、こう予測する。

 「HD DVD対応機の方が市場への投入が速かった分、ソフトのタイトル数も多いが、BD陣営の映画会社などがソフトの出荷を加速し、4月ごろには、HD DVD向けソフトを逆転する。そうなれば、消費者は、ソフトの多いBD志向を強めていき、ソフトを販売する流通段階で、HD DVDソフトを取り扱わなくなり、6月ごろには一気に雌雄が決まる」

 これが、BD優位説の根拠である。

 もっとも、HD DVD陣営の東芝は、「特にコメントすることはない」と意に介していない。優位とされたBD陣営でも、短期決戦に懐疑的な見方がある。松下電器産業グループのパナソニックノースアメリカの山田喜彦会長は、「現行のDVDから次世代DVDへと急激にシフトするのか、大いに疑問がある。ビデオテープからDVDへのシフトにも、ずいぶん時間がかかった。急激な変化はないのではないか」と、しばらくは2陣営による市場争いが続くとみている。

 ≪共存へ第3の道≫

 CESでは、韓国のLG電子が、両規格を再生できるプレーヤーを発表したほか、ワーナー・ブラザーズが、どちらの規格のプレーヤーでも再生できるソフトの発売計画を発表するなど、両規格の“共存”という第3の道もみえてきた。

 「規格の分裂で混乱する消費者に歓迎される」と話すのは、LG幹部。同社は、両陣営による消費者不在の“メンツ争い”に商機を見いだしている。

 家庭用ビデオで繰り広げられた「ベータ対VHS」の規格争いでは、敗れたベータのユーザーが不利益を被ることになった。次世代DVDでも、何度か規格統一を探る動きもあったが、結局、「自分たちの技術の優位性に固執し、決裂した」(業界関係者)。

 もっとも、ビデオテープは、両陣営で大きさが異なり、互換性の実現は難しかったが、次世代DVDはディスクの形状は同じで、両方式に対応した情報読み取り技術を開発すれば、「いまからでも十分に互換は可能」(同)との声は多い。

 世界のエレクトロニクス企業が一堂に会するCESが、両陣営の歩み寄りの機会となるのか。最後に審判を下す消費者は、その動向を見守っている。(米ラスベガス 佐竹一秀)

フジサンケイ ビジネスアイ - 2007/1/12

posted by masahiro @ 2:51 午後

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