2006/11/14

年に一度は文明から離れた生活を

カナダ・西川桂子  素敵なスローライフ 夫の両親や兄弟たちとその家族は毎年、夏になると、義母の持つコテージを訪れる。コテージは60年以上前に義母の家族で手造りした湖畔に建つログハウス風の建物で、街まで車で30分、約50キロ。近くにはガソリンスタンドが一軒あるだけだ。水道はなく、お風呂どころかシャワーもなし。湖で泳いで水浴びをしている。トイレもカナダで“ビッフィー”と呼ばれる、屋外に穴を掘ってその周りに壁と天井をつくっただけのものだ。当然、子どもが好きなテレビゲーム、電話、テレビなんかもない。 夫の家族は、ここで不便な生活を送るのが大好きだ。義母は以前、スクールバスの運転手をしていたために、夏休みいっぱい仕事は休みだった。だから、夫が子どもの頃は、毎夏、1カ月半ほどの間、ずっとこのコテージで過ごしていた。周りに数多くある湖で釣りをしたり、野生のブルーベリーを摘んだり。テレビがないので、読書三昧(ざんまい)。そして、トランプやチェス、ゲームをして過ごすまさしくスローライフを送る。  釣りもモーター付きのボートも持っているものの、通常はカヌーを使用する。ただし、残念ながら、魚はあまり好きではないそうなので、釣った魚もほとんど逃がしてしまうスポーツフィッシングだ。  今では子どもたちが大きくなり、それぞれに家庭を築いているが、彼らが今度は家族を連れて戻ってくる。夏休みいっぱい休みがあるわけではないので、それぞれ1週間から2週間の予定で訪れる。  夫は6人兄弟の一員だ。休みを取れる時期が違うので全員が一同にそろうことはまずないが、それでも3家族ぐらいは一緒になる。問題は部屋数で、ベッドだけでいっぱいになるような小さな寝室が4部屋あるだけだ。  孫が増え、部屋が足りなくなってきたため、夫の兄の一人が、“離れ”を建てた。ただの小屋で、二段ベッドが並んでいる。この離れは孫たちの部屋で、上は15歳から下は3歳までが眠る。年上の子どもは小さい子どもの面倒をよく見てくれるのがほほえましい。  実は私はこのコテージ行きが苦手だ。カナダの湖の水は私には冷たく、シャワー代わりに入れと言われるとツライ。風邪をひかないか心配だ。だけど、1週間テレビも電話もなし。文明から遠く離れた生活をするのは悪くはないと思う。
朝日新聞 - 2006年10月13日
posted by masahiro @ 12:12 午後

0 件のコメント:

コメントを投稿

<< ホーム