『50歳プラス』 を生きる 健康食品販売会社社長平島 節夫さん(54歳)
名刺には「社長」の文字が輝いている。「ただし、部下は一人もいませんがね」と苦笑いする平島節夫さん=福岡県久留米市。四年前、大手スーパーのダイエーを辞め、インターネットで健康食品「フコイダン」を販売する会社「インフィニティ」を設立。自宅の一室のオフィスで、全国からの注文に応じている。 大卒後二十八年間、九州各地の店で、寝具、家電など「リビング用品」の販売に従事。退職のきっかけは、業績の低迷に伴って悪くなる職場環境だった。リストラで、リビング用品部門から生鮮食品部門へ、といった無理な配置転換や降格が周囲に増えていた。売り場の店員も徐々に減り、納得のいく接客もできなくなっていた。 「定年までいても、いいことはなさそう」。定年前に辞めれば、退職金が年収分、上乗せされる制度が導入されたことも独立にプラスだった。 故郷の久留米にローンで家を建てて三年、中学生と小学生の子ども三人がいたことにも後押しされた。「自営業は転勤も定年もない。下の子が大学に行く年齢になっても自分でお金が稼げる」とプラス思考で決断した。 母親のツタエさん(80)は「大企業で定年まで働けば間違いない」と反対したが、妻の美保さん(39)は驚かなかった。その五年前にも独立を考えていた時期があり、夫から夢を聞かされていたためという。 「得意なパソコンで事業を起こす」。方針は明確だった。その中から、ネットショップを選んだ。パソコン教室も考えたが、競争が激しく事業が成り立たないと思い、やめた。「価格競争になれば、後が大変というのはダイエー時代の経験から自然と思い至ったのかもしれない」。扱う商品も同じ基準で探し、東京の健康食品の見本市でフコイダンを見つけた。 フコイダンは、海藻のぬるぬるの成分で、免疫力を高めるとされる。中でもトンガ産のモズクから抽出し、体内に吸収されやすいよう粒子を細かくしたものにひかれた。「青汁などに比べライバルは少なそう。品質が良ければ売れる」。メーカーが、偶然、久留米市内の業者だったこともあり、商談がとんとん拍子に進んだ。 二〇〇三年九月からネット上の代理店として販売を開始。資本金の六十万円でパソコンを買い、商品を仕入れた。商品は一・八リットルで四万五千円と高価だが、狙い通りに、売り上げを伸ばした。年収は、会社員時代のほぼ倍に。人脈が広がったのもうれしい。仕事の成功がきっかけで、同市の起業家支援のNPO法人の常務理事などを務めることになり、大企業の社長や大学教授ら、以前は思ってもみなかった人たちに会える。講演会の依頼もある。 商売で、社会に貢献している実感もあるという。実は、四十三歳の時、父親をがんで亡くしている。お客には、病気の人やその家族も多い。「父の場合、医者の言うことを聞くという選択肢以外なかった。困っている人に、多くの選択肢を示せているのかな」 (佐橋大)
東京新聞 - 2006年11月14日
posted by masahiro @ 4:59 午前
0 件のコメント:
コメントを投稿
<< ホーム