2006/12/30

「ゲームリテラシー」教育を

ゲーム機やソフトが進歩する一方で、「ゲームリテラシー」教育が進んでいない──と専門家。ゲームリテラシー教育とは、子供にゲームに描かれていない背景、制作者の意図まで理解させ、子供がゲームにコントロールされないように教えることだという。

 ゲーム業界にとって、年末年始商戦は正念場。任天堂、ソニー・コンピューターエンタテインメント、マイクロソフトの3社が次世代機をそろえ、ソフトも充実させている。お年玉でゲームを買う子供たちも増えそうだが、保護者にとって心配なのは、テレビゲームが子供の生活に悪影響を与えないかどうか。お茶の水女子大文教育学部人間社会学科の坂元章教授(社会心理学)に、「家庭でのテレビゲームのルール」について聞いた。(村田雅裕)

 「ゲーム機やソフトが進歩する一方で、ゲームリテラシー教育が進んでいないのは事実ですね」

 坂元教授によると、さまざまな実験をしたところ、暴力が正当化されている▽暴力を振るうことで報酬が得られる▽主人公が魅力的に描かれている場合、個人差はあるものの、暴力シーンが多いシューティングゲームをやることで、プレーヤーの暴力的傾向が助長されるという。

 ただその場合でも、暴力が正当化される理由は何か▽なぜ、主人公は暴力を振るわないといけないのか▽倒された者の家族はどんな気持ちか──など、「ゲームに描かれていないもの」を考えることで、暴力は「ゲームの中のもの」と理解させることは可能だという。

 ゲームリテラシー教育とは、子供にゲームに描かれていない背景、制作者の意図まで理解させ、子供がゲームにコントロールされないように教えることだ。

 そのためには、「保護者の役割が重要ですね。子供が小さいころに、きちんとゲームリテラシー教育をすることが必要。幼稚園でも早すぎることはありません」と坂元教授。というのも、子供の年齢が高くなるにつれて、家族や学校よりも、友達、メディア情報の影響が大きくなるからだ。

では、保護者は何をすればいいのか。

 「無理やりゲームを取り上げるのは逆効果。親が子供のゲームソフトを理解し、ゲームについて会話をすること。そして、子供自身に『わが家のゲームの決まり』を作らせることです」。子供が自発的にルールを決めることで、ゲームに対する「自立心」を養うことができるという。

 坂元教授は、家庭で作るルールとして次のようなものを挙げる。

 子供部屋にゲーム機を置かない▽ゲームをしない日をつくる▽子供の年齢にふさわしい内容かどうか、レーティング(格付け)を確認する▽子供と一緒に同じゲームで遊ぶ?などだ。

 週に1日でもゲームをしない日をつくり、さまざまな体験をさせることも大切。ゲームをしないことで別の楽しみを体験できるようになれば、ゲームと子供の距離感も出てくる。

 茨城県東海村では平成16年4月から、毎週土曜日を「ノー・テレビデー」として、テレビを見ないで地域社会や家庭内のコミュニケーションを図ろうという運動をしているが、そのゲーム版だ。

 また、コンピュータエンターテインメントレーティング機構が家庭用ゲーム機のソフトについて、レーティングを行っている。そのソフトが子供にふさわしいかどうか、チェックするのも保護者の義務だ。

 ただ問題は、保護者が子供のゲームについて、何の関心も持たないケース。新聞やテレビに対するメディアリテラシー教育を行う学校は増えているが、ゲームリテラシー教育をしている学校はほとんどないだろう。

 「学校が教育をせず、保護者も関心を持たなければ、子供は何のコントロールも受けないまま、ゲームに接することになる。行政もゲームリテラシー教育について、関心を示す必要があるのではないでしょうか」と坂元教授は話している。

ITmedia - 2006年12月26日

posted by masahiro @ 4:44 午前

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