2007/01/12

弱者を死に追い込む医療・介護制度

大病を患い、働けなくなって収入減に、そして、国民健康保険税(国保税)を滞納。保険証を取り上げられ、「被保険者資格証明書(資格証明書)」を交付される。病気が再発、やむなく病院へ。窓口で医療費を全額請求され、銀行へ。相手にされず、仕方なくサラ金から借り入れて支払い、レセプトの証明書を病院で受け取り、市に返還請求を行う。

 2ヵ月後に7割が返還されると思ったら、滞納分を差し引かれ、結局、サラ金の返済ができなくなってサラ金地獄に?ー。

 これはフィクションだが、あなたもこんな事態と隣合わせにいるかもしれない……。

 国民健康保険(国保)制度は国民の約半数の2500万世帯が加入しているが、国保税の滞納者は470万世帯に達し、そのうち約32万世帯に「資格証明書」が交付され、窓口で医療費の全額を現金で払わなければ治療が受けられない状況になっている。こうした世帯の中からは、治療を受けず手遅れになって死亡する人が出ている。(*参考)

【払いたくても払えない国保税の仕組み】

 国保税の仕組みは、収入に応じて保険料を支払う健康保険と違って、収入に比例する所得割と収入に関係なく加算される世帯割・人頭割・資産割で構成されている自治体が多い。その為に、低収入でも保険税が高額になり、その上、同様の仕組みの介護保険税が上乗せされ、健康保険加入者より高負担になっている。

 例えば、年収400万円(40歳以上65歳未満の夫婦と子供二人の家族四人、固定資産税20万円)の場合、収入に比例して課税される健康保険加入者は、介護保険料との合算で182,942円で負担率4.6%、年収150万円(同)の場合は、69,585円で負担率4.6%でほぼ同率。

 しかし、国保加入者は、介護保険料との合算で485,600円(熊谷市の場合)で収入の12.1%の負担率で、健康保険の約3倍。年収150万円(同)の場合は257,600円で、負担率は更に高くなって17.2%、健康保険の約4倍に達している。

 国保税は、収入約480万円以上で負担上限額の52万円に、介護保険は収入約690万円で負担上限額の7万円になり、高収入でも合算で59万円を超えて負担することはない。

 仕組み上、所得が低くなるほど(減免制度のある自治体はその所得まで)負担率は高くなる。滞納者が出るのは必然的である。そのような仕組みを踏まえず、構造改革を唱えた小泉純一郎前首相が厚生大臣だった1997年に国民健康保険法を改悪し、国保税などを滞納している世帯主に被保険者証の返還を求めることができるようにし、2000年からは義務付けた。

 その結果、2005年度の「資格証明書」の交付世帯数は、10年前の6倍の約32万に増えた。国保加入者は、健康で元気に働いていた時に納めた国保税は人のために役立っても、病気になって滞納すると「資格証明書」や「短期被保険者証」が交付され、安心して医療を受ける権利が奪われ、自分のために使われにくくなる矛盾が生まれた。

【国民皆保険の精神を生かした構造改革を】

 国民が加入する医療保険を健康保険・共済組合・船員保険・国民健康保険・老人保健などのいずれかに区分するのではなく、これらを一本化し、所得に応じた負担(所得税)で全国民が等しく良質の医療を受けらるようにすべきだ。それが国民皆保険の精神であり日本国憲法が保障しているところであり、世界に誇れる制度でもある。

 小泉路線を継承する安倍政権初の「07年度予算編成の基本方針」は、「年金、医療、介護等の社会保障制度は、人生のリスクに対するセーフティネットである」と位置づけ、「社会保障の一体的改革を進める」 としているが、健康を害し収入が減ったために命を失うような状況に陥らぬ制度に改革することが求められる。真の構造改革を行うよう安倍政権の監視が必要である。 
JanJan - 2007/1/11

posted by masahiro @ 5:17 午前

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