釜ヶ崎・住民票問題の本質を問う
大阪市西成区の釜ヶ崎(あいりん)地区の5階建てビル「釜ヶ崎解放会館」に、約3300人の住民登録があったと昨年12月、新聞、テレビなどの大手メディアが一斉に報道した問題で、報道に危機感を持った支援団体や関係者が9日夜、西成区の西成市民館で緊急の勉強会と意見交換会を開いた。
主催した「釜ヶ崎のまち再生フォーラム」の、ありむら潜・事務局長が「報道で、この住民登録が不正であるかようなイメージでとらえられる恐れがある。住民登録をしている当事者の中には、精神的な痛手をこうむっている人もいる。こうした事態に対応するために、住民票とはそもそも何かの法律解釈も含めて、いま起こっている問題に対して意見交換をしましょう」と呼び掛けた。
集会は、講師として住民登録やホームレス問題に詳しい静岡大学の笹沼弘志教授(憲法学)を招いて、「住民票問題の本質を問う」のテーマで法解釈と現実の運用のズレなどについて学んだ。
笹沼教授は「住民登録は元々、事務手続きや商取引を円滑にするために便宜上、考えられた制度です。住民登録がないからといって、本来市民が持つ権利を奪うことは許されません。住所がなければ選挙権を行使できないとか、生活保護の受給資格が無いなどと行政が主張するのは、憲法に反しています。それを改めてもらわなければなりません」と解説した。
今回の住民登録問題には、メディアに恣意的な報道が見られた。最初に12月7日付で報じた読売新聞は「44m2に3300人住民登録・居住者なし? 経緯は謎」の見出しで、「架空登録」と報じた。市民グループの代表にコメントを求め「異常で不気味」という談話を引き出している。
この報道からはあたかも、この住民登録が不正で反社会的であるかのような印象を受ける。他紙も同様の論調で追随した。
「読売」は12月16日付紙面でさらに追い討ちをかける。「選挙権行使を調査」の見出しで、住民登録問題で大阪市選挙管理委員会は、登録で選挙権を得た人が実際に投票したかを調査することを明らかにした、と報道。「違法投票」という文言を交えた記事だ。「読売」が現実に住民登録が認められている市民に、なぜ、牙を向けるのか不可解だ。
勉強会の参加者からは「マスコミには人権に踏み込んだ報道をしてほしかった。問題の裏に法の不備があることへの配慮がない。一過性でおもしろおかしく報道するのはおかしい」などマスコミへの不信感を訴える意見が出た。
笹沼教授は「一番恐しいのは警察が公職選挙法違反などの名目で、刑法上の責任を追及してくるのではないかということです。世論誘導もありうる。そもそも住所とは、生活の本拠地があれば住民登録して得ることができる権利なのです。従って住民登録の問題が選挙違反と結び付けられることがあってはならないのです」と述べ、警察の暴走に警戒しなければならないと指摘した。
大阪市は支援団体の問い合わせに対し、「居住の実態を確認のうえ、法に則して住民登録の適正化を図る必要があると考えている。国民健康保険や介護保険など各種施策にも影響を与える可能性があるので、関係先とも調整しながら慎重に対応していきたい」と回答している。
JanJan - 2007年1月10日
posted by masahiro @ 3:02 午後
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