2006/12/21

介護保険事業など資金の流れを見る自治体再建法制 分権で体力つける必要も

財政危機に陥った自治体の新しい再建法制を検討してきた総務省の有識者研究会は、具体的な制度設計案を示した最終報告をまとめた。赤字比率や連結ベースの債務残高など四つの指標の公表を義務づけ財政状況を把握しやすくするとともに、破たんを未然に防ぐ是正措置など盛り込んだ。

 現行の地方財政再建促進特別措置法に代わる新法案は来年の通常国会に提出され、二○○九年度の施行を目指す。現行法制では、北海道・夕張市の破たんに見られたように、財政が行き詰まるまで問題が表面化しにくいことから検討を重ねていた。

 最終報告では、地方財政を客観的に評価するため現行の赤字比率と実質公債費比率に加えて、フロー指標とストック指標の二つの新指標を導入する。フロー指標は、公営企業会計などに範囲を広げ赤字になりがちな国民健康保険や介護保険事業など資金の流れを見る。ストック指標は、三セク、地方公社、独立行政法人などの財政規模に対する将来負担の割合などを示す。

 四つの指標を公表し、財政の透明性を高めれば、財政運営に緊張感が生まれ、無駄な経費を抑え、住民や議会のチェックがしやすくなろう。実質公債費比率については既に本年度から総務省が公表を始め、財政の苦しい自治体が多数に上っている実態が明らかとなっている。

 財政再建は二段階で行う。四つの指標のうち、一つでも一定水準より悪化した場合、早期是正団体に指定して財政健全化計画の策定を義務付け、自主的な改善を促す。それでも悪化が続いた場合は、国などの管理下に入る再生団体への移行を義務化し、経費削減策など具体的な再生計画を策定させることになる。

 自治体の借金を棒引きにする債務免除の制度については、財政力の弱い自治体の資金調達に影響が出るため「さらに検討が必要」とした。自治体は、財政破たんしても行政サービスを維持する責任があり、銀行などの再生と同様なやり方は避けるべきだろう。

 今国会で国から地方へ権限など移譲の理念を盛り込んだ地方分権改革推進法が成立し、分権改革は第二期に入る。しかし、税財源の移譲に国の抵抗感は根強く、法案審議では国と地方の税源配分など財政上の改革の方向を示した条文にやっと「地方税財源の充実確保の観点から行う」との文言が追加された。

 地方が自立するには国からの権限と税財源移譲を進めることが肝心だ。再建法制は必要だが、自治体の体力が弱いまま準備しても、地方の不満は高まるだろう。

山陽新聞 - 2006年12月9日

posted by masahiro @ 2:09 午前

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