傷にも効くガゴメコンブ 函館の産学官グループ、治療用シート開発へ
【函館】道立工業技術センター(函館)を核とする函館の産学官グループは今年、道南特産のガゴメコンブのぬめり成分に含まれる物質フコイダンを使い、切り傷に張って治癒を早めるシート状の「創傷被覆材」の開発に向けた研究を本格化させる。硫酸化多糖のフコイダンは細胞再生を促す働きがあり、同グループは二〇○八年度までに高純度フコイダンを抽出し、最適な効果を引き出す被覆材を開発する計画だ。
グループには、文部科学省の都市エリア産学官連携促進事業でガゴメ活用を進める道立工業技術センターと北大大学院水産科学研究院、道南を中心とする企業三十五社などが参加。
同センターによると、硫酸化多糖はヒトの真皮(皮膚深層部)内にある「繊維芽細胞」を増やす因子(FGF)を活性化することが他の研究で確認済み。グループは乾くと繊維状になるフコイダンを布に織り込み、実験動物の傷口を覆って組織の再生効果を確かめる。
既に○六年四月から試験を始め、ガゴメから純度90%を超すフコイダンの抽出に成功。○七年一月には一度に四十?七十グラムのフコイダンを高純度で抽出する最新設備を道立工業技術センターに導入し、実証実験に入る。
○七年度以降は布に織り込む量などを変え動物実験を重ね、皮膚の表層、深層の組織をバランス良く再生する被覆材を開発する。量産化を前提に医薬系企業との共同研究もする考えだ。
同センターによると、創傷被覆材の市場規模は約百四十五億円。アレルギー反応が起きにくく、保湿性に優れた天然素材として海藻に含まれるアルギン酸や、カニの殻に含まれるキチンキトサンなどの多糖類が活用されているが、硫酸化多糖の活用事例はないという。
道立工業技術センターの青木央バイオテクノロジー科長は「フコイダンも抗アレルギー作用や保湿性があり、加えて治癒促進が期待できる。また、高純度で大量に抽出できれば健康食品にも利用でき、活用の道が広がる」と話している。
ガゴメは函館と噴火湾、下北半島北端の沿岸に生息し、フコイダンは動物実験などでがん細胞の増殖抑制効果が確認されている。ガゴメを活用して新産業創出を目指す函館の「都市エリア」事業は○三年度始まり、○六?○八年度で補助金六億円が交付される。今回の資金もこれを用いる。
北海道新聞 - 2007年1月3日
posted by masahiro @ 6:13 午後
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