2007/02/07

『新・買ってはいけない 4』を読んで

新・買ってはいけない 4」は、週刊金曜日に連載中の「新・買ってはいけない」の2005年8月?2006年9月掲載分に加筆訂正したものである。私はこのシリーズの他の巻の通読はしてないが、基本的なパターンはおそらくこれまでと同様で、食べ物、飲み物、化粧品、シャンプー・ソープ、雑貨、ダイエット、薬、サプリメント・健康食品、の、各カテゴリーの商品を取り上げて、主としてその危険性を指摘するというものである。 シリーズ第4巻の本書では、これが第1部になっていて、第2部では最近特に話題の商品群である、ナノテク商品、大豆飲料&豆乳、トランス脂肪酸の3つのカテゴリーを設け、各社の商品を比較解説している。 「買ってはいけない」シリーズは、これまで良くも悪くも話題を呼んだといえる。ベストセラーになった巻もあった一方で、この連載の内容がばかばかしくて週刊金曜日を読まなくなった、という声も聞くし、「『買ってはいけない』は買ってはいけない」という本も出版されている。 私は上述のようにこれまでこのシリーズを買って読んだことはなかったが、内容に関する話を聞くにつけ、その内容を否定的に評価する声に分があるのではないかと思っていた。なぜなら、本シリーズでは、たとえば多くの食品が紹介されているが、広く市場に出回っている何か特定の食品を取り上げて「これは危険であるから食べてはいけない」、と言い出すのは、最近特に批判の対象になっている幾つものテレビ番組が特定の食品が「健康によい」ことをもてはやすのと全く同様にばかばかしいことであると考えるからである。 以前の記事にも書いたことがあるが、食べる、という行為は生命維持に必要だから行うものであって、これだけ食べていればよいというような万能な食品はない。主として先人の経験に基づき、みんなが食べても大丈夫と経験的に判断されたものを少しづつ食べることによって、栄養のバランスをとり、危険を回避する、というのがまず基本的な考えであって、それ以上に重要なこと、というのは殆どわかっていない。農薬や食品添加物に関しても、近年は技術が進み、規制も厳しくなっていることから、ことさらにその危険性を煽り立てる意味は全く感じられない。危険をあおっている記述は、たいてい現状の認識に誤りがあるといってよいと思われる。 これまでの本シリーズではそうした点において多くの批判を浴びたが、今回、本書を読んでみると、私にとっては意外なことに、多くの記載は妥当と考えられる範囲のものであった。まず、たとえば、スナック菓子に関して「うすしお」「塩分2分の1カット」といった表現には根拠が希薄で意外に塩分は多いこと、清涼飲料水で「天然水」という商品名でもカロリーや塩分を多く含むこと、また、「運動でカロリーを燃やす○○」という飲み物は飲んでも痩せられる訳では全くないこと、など、宣伝文句に惑わされて本質を見失ってはいけない、という指摘をする項目が多い。また、サプリメントや「健康に有用な成分」を含むとされる食品に関しても、摂りすぎるとかえって危険ですらある可能性を指摘するのは全く妥当なことである。便秘の解消を謳うティーバッグのお茶の主成分が下剤として使われるセンナなので、「どうせ飲むなら医薬品のセンナを服用したほうがよほど安い」という指摘もごもっともな話である。 これらの指摘は妥当なものだが、これらは結局「買うなら気をつけよう」ということであって「買ってはいけない」という指摘にはなっていない。つまり、最近の「買ってはいけない」は多くの項目が妥当な記載になると同時に、毒も抜けて「買ってはいけない」とはいえなくなってしまったのであろう。 もっとも、残念ながら、ことさらに危険を煽るばかばかしい項目も未だにいくつか散見されたことも指摘しておく必要はあるかもしれない。たとえば「ベンゼン含有の可能性のあるドリンク」。ここに書かれている程度の量のベンゼンなど他の食品中にもいくらでもあり、取り上げて危険性を指摘する意味など全くない。 ちなみにこのベンゼンに関する記載は、最後が「こうした消費者保護の視点がないメーカーの商品は、買ってはいけません」と結ばれているが、上述の比較的妥当な内容の項目では「買ってはいけない」とまでは言えない一方で、このような「買ってはいけません」と言い切るような項目には全く内容が無いのは、皮肉なことだといわざるを得ない。本書の目的が、テレビや広告で広く目にする商品に関して正しい理解を促す、ということであるなら、それは意味のあることだとは思うが、「買ってはいけない」などというタイトルをつけるのはそろそろやめるべきではないか。(山田ともみ)JanJan - 2007/2/7
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posted by minasan @ 2:38 午後

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