日本シミュレーション&ゲーミング学会 2006年度秋季大会記念シンポジウム(前編)
11月11日、立命館大学で「“ゲーム”は本当に教育に役立つか?海外の先端事例を巡って」というシンポジウムが開催され、ペンシルバニア州立大学大学院の藤本徹氏と、カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員・立命館大学助教授の稲葉光行氏が紹介を行った。その後、日本シミュレーション&ゲーミング学会の市川新氏、三橋秋彦氏を交え、さまざまな視点から教育効果における議論がなされた。「ゲームは学習や教育に役立つ」という団体による、自問自答ともいえる性質を持っている。藤本氏はシリアスゲーム分野における第一人者として、ゲーマーの間でも人物だ。藤本氏はまず、ゲームを教育に利用するメリットとして「モチベーションの維持・喚起」や、「行為・失敗を通した学習」などを上げた上で、ゲームと学習に関する誤解が世間的に見られるとした。人はインチキな売り文句にだまされたと感じている。正確さが不十分、正確なものは逆に退屈7:ゲームの有効性に関する研究が不十分で、利用側のニーズとかみ合っていない8:シミュレーションゲームで教育・訓練コストの高い分野で、教育分野ではコストが増大する9:本格的にゲームを利用した教育には、大きな教育システムの変革が必要だが、リーダーシップがとれる人材はほとんどいない10:実際には優れた教育用ゲームがあるが、教育の主流として認識されていない その上で藤本氏は、シリアスゲームの定義を「教育をはじめとした社会の諸領域の問題可決のために利用されるデジタルゲーム」とし、特定用途のためにゲームを開発するスタンスと、既存のゲームを特定用途のために利用する、2つの方向性があるとした。その後、藤本氏は応用事例について、イギリスと最新事例を紹介した。その後10人の教師に「ローラーコースタータイクーン3」「シムズ2」「ナイツ・オブ・オナー」の3タイトルを利用した授業を行ってもらい、その過程を調査したものだ。このうち「シムズ2」ではプレイした内容を英語で議論したり、作文を行うなど、語学授業に活用。ジェットコースターの動きや統計データから、概念を学習するなど、授業に用いられた。アメリカにおいては、事例が紹介された。講演内ではカリフォルニア州レッドランド学区と、ウエストバージニア州の事例が紹介された。ウエストバージニア州では、「ダンス・ダンス・レボリューション」が全州の公立学校に導入され、産官学の連携プロジェクトとなった。テストケースで判明したこととして、ゲームを与えっぱなしにすると効果が落ちること。藤本氏は「シヴィライゼーション」シリーズの開発からスピンアウトした、シリアスゲームのディベロッパー、Breakaway社CEOのDoug Watley氏による「私たちはこれまでシリアスゲーム開発に取り組んできて、一つはっきりと確信をもったことがある。それは、ゲームには未来をよい方向に変える力があり、私たちはゲームによって未来を創ることができる。ということだ」という言葉を紹介し、わざわざ「シリアス」ゲームと言わなくても、ゲームがシリアスなものとして社会で広く利用される未来像を示した。
RBB Today - 2006/11/13
posted by masahiro @ 2:43 午後
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