身近にも危険性のある「エコノミークラス症候群」
車いす患者の発症事例 飛行機をはじめとする乗り物のせまい座席に、長時間同じ姿勢で座り続けていると発症の危険性があるといわれている『エコノミークラス症候群』。しかし、乗り物だけではなく、車いす患者にも発症の可能性の高いことが報告された。 研究報告を発表したのは大阪医科大学神経内科の木村文治診療科長。車いす患者とエコノミークラス症候群の関連についての研究・発表が行われたのは今回が初めて。 一昨年夏、呼吸困難を訴え車いす生活のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者が救急車で搬送された。ALSによる症状と違っていたことと、患者の日常生活の様子から木村科長はエコノミークラス症候群を疑い、胸部CT(コンピュータ断層撮影)検査を行ったところ、左右の肺動脈に大量の血栓(血のかたまり)が発見された。「この患者は毎日会社で8時間、車いすに座りスーツ姿で仕事をしていました。トイレは車いすを押してもらわないといけないため、水分を極力控えていたようです。乾燥で脱水状態になり、せまい座席に長時間座ったままの飛行機と似たような状況だったわけです。それで車いす患者とエコノミークラス症候群の関連性の研究を始めましたが、調査の結果、パーキンソン病患者2人の足の静脈から血栓が発見されました」(木村科長) 〈左〉は、おしりの部分にクッションがなく、ひざの位置がおしりより高いため、下腿部分の血液がとどまりがちになる。 〈右〉は、おしりから大腿にかけてクッションを敷くことにより、ひざの位置がおしりより低くなり、大腿から下腿部分にかけての血液がとどまりにくくなる。 車いすの大きさは少し余裕のあるサイズにし、背もたれの高さにも注意する。身近にもある発症の危険性 『エコノミークラス症候群』の正式な医学病名は「急性肺動脈血栓塞栓症」。同じ姿勢で長時間座っていると、太腿やひざの裏側が圧迫されて足の静脈に血栓ができる。それが立ち上がった瞬間に肺に流れ着いて血管をつまらせ、肺が機能しなくなり呼吸困難になって死を招くというもので、食事の欧米化などによって増加傾向にある。「職業的に発症の危険性が高いのは、トラックやタクシーの運転手など長時間同じ姿勢で座り続けている人ですね。また、前述の患者と同じように、乾燥したオフィスで同じ姿勢のまま長時間にわたってパソコンの入力作業などをする人も危険性が高いでしょうね。これは職業ではありませんが、テレビゲームを延々と夢中になってやっていた人が発症した症例も報告されています」(木村科長) また、手術後の人や、糖尿病や高脂血症、肥満などの生活習慣病の人も血栓ができやすいので注意が必要とのこと。予防対策のポイント 発症を防ぐための最大のポイントは、(1)血流を圧迫する姿勢で長時間座らないこと表、(2)血流をよくするために水分を十分補給すること。 「水分は水よりも、ナトリウムを含み体液に近いイオン飲料の方が好ましいでしょう。暑い季節には気づかないうちに脱水状態になっていることがありますので、水分補給にはとくに注意していただきたいですね」(木村科長)
朝日新聞 - 2006年10月19日
posted by masahiro @ 12:35 午後
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