2006/11/14

大弦小弦 (2006年10月27日 朝刊 1面)

 初めて図書室で借りた本はベートーベンだった。なぜ手に取ったのかは覚えていない。髪を逆立て、ギロリとにらむ表紙の人物に圧倒されたのかもしれない。 大急ぎで帰り、夢中で読んだ。色鮮やかな挿絵とともに展開するストーリー。ワクワクしながらページをめくった。感動のラストシーンは四十年近くたった今でも鮮明だ。 最近、インターネットやテレビゲームなどの普及で子どもの読書離れが指摘されるが実際はそうでもない。文部科学省の二○○四年度調査では、一年間に図書館で借りた本の冊数は児童一人当たり十八・七冊。調査を始めた一九七四年度の約六倍、八六年度の約二倍という。 活字をたどり、数百、数千ページを読むには集中力と根気がいる。その過程で想像力を膨らませながら、考え、喜び、悲しみ、共感する。そうした読書を楽しむ子どもが増えることは教育上、良いことのように思えるが事は単純ではない。 経済協力開発機構(OECD)の二〇〇三年調査で高校一年生の読解力低下が判明、教育関係者を慌てさせた。文科省は「読解力向上プログラム」なるものを作成、対策に乗り出した。 読解力の向上は大いに結構だが、いかにも堅苦しい。少し遠回りしても、子どもが本に親しみ、楽しむ環境づくりを進めてはどうだろう。本が好きになれば、おのずと幅広い分野に興味を持ち、理解力も向上すると思うが。きょうから読書週間。(平良武)
沖縄タイムス - 2006年10月26日
posted by masahiro @ 1:08 午後

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