働くことの本当の意味、答えまだ見つからないけど
「性別や年齢、学歴に関係なく能力次第で出世できる」。2003年春、専門学校を卒業した愛(20)が、福岡市博多区の人材派遣会社を選んだのは、そんな社風にあこがれたからだった。
配属された計算課の仕事は派遣社員約600人の給与計算。愛の熱心な仕事ぶりは、社内ですぐに評判になった。
「次は、愛が主任に?」。05年10月、そのうわさは愛の耳にも入っていた。しかし、人事発表で、愛の名前が呼ばれることはなかった。もともと上昇志向が強かった愛の頭から「出世」の二文字が離れなくなったのは、この「事件」以降のことだった。
それから、以前にも増して仕事に打ち込むようになった愛は、同時に、会社に伏せて天神の内科に通い始めていた。医者の診断は「過敏性大腸症候群」。通勤中、毎日のように起こる腹痛は、仕事のストレスが原因という話だった。
仕事をすればするほどひどくなる一方の腹痛。通院中のバスで、愛は自問自答を繰り返すようになっていた。「私のあこがれた能力主義って、なんだったんだろう」。
社内には、親の年齢ほどの部下を抱える20代の課長がいる一方、毎月入ってくる新入社員の半数は半年後に会社にはいない。出世だけを目指してきた自分の生き方に、迷いが生まれていた。
通院を始めて4カ月が過ぎた朝、愛は、ベッドから起き上がれないほどの腹痛に襲われた。電話で「休みたい」と伝えた課長の返事は「本当に病院に行く必要があるのか?」。
口ぶりに、部下への気遣いはなかった。電話を切った後、むなしさだけが残った。「一度リセットしよう」。1カ月後、愛は辞表を出した。
西日本新聞 - 2007/2/16
ラベル: 仕事のストレス
hotclick さんの投稿 @ 23:36
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